組織に所属しているからこそ、発揮できる技術を紹介した本です。
先日の高城剛さんのメールマガジン(Vol.773)で、「ノマド的な思想と、組織特有の権力構造の折り合いのつけ方」についてのQ&Aがありました。
高城さんは30代に組織での根回しの技術を習得したことにより、40代で海外、50代で自分の仕事ができるようになったそうです。組織を使い倒すために「根回しの技術」を徹底的に習得することを推奨されていますが、内容を補完する本がありますのでご紹介します。
経営学・組織行動論・組織アナリティクスを専門とする研究者の木村琢磨氏による『社内政治の科学』は、多くのビジネスパーソンが「ドロドロして不健全」と敬遠しがちな社内政治(Organizational Politics)を、経営学・組織心理学の視点から客観的に解き明かした一冊です。
単なる「世渡り術」の解説本ではなく、数多くの学術論文や調査結果に基づいた「科学的エビデンス」をベースにしている点が最大の特徴です。
主な内容
- 社内政治は「必然的」に発生する
- なぜ起こるのか:組織には「資源(予算、ポスト、人員)の希少さ」と「不確実性」が必ず存在するため、奪い合いや意見の対立が生まれるのは構造上避けられないと説いています。
- 善悪を超えた視点:政治を「悪」と切り捨てるのではなく、組織を動かすための「エネルギー」や「潤滑油」として捉え直す視点を提供しています。
- 「政治的スキル(ポリティカル・スキル)」の解剖
- 対人影響力:他者の心に働きかけ、納得させる力。
- 社会的察知能力:周囲の状況や人間関係の機微を読み取る力。
- ネットワーキング能力:組織内外に多様なつながりを作る力。
- 誠実さの演出(表面的誠実さ):相手に「この人は信頼できる」と感じさせる振る舞い。
- 社内政治が及ぼす影響
- ポジティブな側面:スキルが高い人は、ストレス耐性が高く、昇進スピードも速い傾向にあります。
- ネガティブな側面:政治が過剰な職場では、従業員の不満が高まり、離職率の上昇や生産性の低下を招きます。
- 組織としての向き合い方
- 本書の核心的なメッセージ
本書では、社内政治を「個人の利益や集団の利益を守るための、非公式な影響力行使」と定義しています。
仕事の実力があっても、それを周囲に認めさせ、協力を得る力がなければ成果は出せません。本書では、以下の4つの要素からなるポリティカル・スキルの重要性を解説しています。
社内政治が個人のキャリアや組織にどのようなインパクトを与えるかを、データをもとに分析しています。
マネジャーや経営層に向けて、不健全な政治を抑制し、健全な政治力をどう組織の推進力に変えるべきかの指針を示しています。透明性の高い意思決定プロセスが、いかに「負の政治」を減らす鍵になるかが強調されています。
「社内政治=単なる悪いもの」とは扱わないところです。派閥、根回し、印象操作、人脈づくりといった行動を、感情論ではなく、組織で意思決定に影響を与える“非公式な影響力”として分析しています。
この本がおすすめな人
- 「正しいことを言っているのに、なぜか周囲が動いてくれない」と悩む方
- 上司や他部署との調整業務に疲れ果てている方
- 管理職として、チーム内の派閥争いや足の引っ張り合いを解決したい方
- 世に溢れる「感覚的な処世術」ではなく、論理的な根拠を知りたい方
社内政治を「避けるべき泥沼」ではなく、「攻略すべきゲームのルール」として再定義してくれる、非常に実戦的で知的なビジネス書です。組織を出て個人で活躍する場合も、組織に残って活躍する場合も、自身の可能性を最大限に広げたい方におすすめの一冊です。
