なぜ「平和への期待」は裏切られ、「力の支配」が回帰しているのか?
高城剛さんのメールマガジンのコーナー「世界の俯瞰図」では、毎回世界を俯瞰的に見ながら、日本の立ち位置を考えるための、高城さんの視点による鋭い考察が発表されています。毎週届く情報をさらに深く理解するためにおすすめの一冊が2025年12月に発売されましたので、ご紹介します。
本書『新書 世界現代史 なぜ「力こそ正義」はよみがえったのか』は、共同通信のベテラン記者として長年欧州を拠点に取材してきた著者が、「なぜ21世紀の今日、再び軍事力という暴力が国際政治の主役に戻ってしまったのか」という謎を、1989年の「ベルリンの壁崩壊」から現在に至るまでの35年間の歴史を辿ることで解き明かす本です。
主な内容
- 「ベルリンの壁崩壊」という原点への問い直し
1989年、自由民主主義が勝利し「これからは法の支配と経済交流の時代だ」と世界中が熱狂しました。 - 著者は、その「平和の配当」への過信が、その後のロシアや中国の野心を読み誤らせる原因になったと分析しています。
- 欧米が「自分たちの価値観は普遍的だ」と思い上がっていた隙に、世界がどう変容していったかを克明に描いています。
- 「力こそ正義」の復活:プーチンと習近平
「ルール」よりも「力(軍事力や資源)」を信奉する指導者たちが、いかにして台頭したかを詳述しています。 - ロシア:なぜプーチンは国際法を無視してウクライナ侵攻に踏み切れたのか。その背景にある「大国としての復讐心」と西側への不信感。
- 中国:経済発展が民主化をもたらすという西側の期待を裏切り、強権的な体制を強化したプロセス。
- ドイツの変節と混乱
著者の専門であるドイツの視点が非常に強いのが本書の特徴です。 - かつて「ロシアとの対話」を重視し、エネルギー依存を深めていたドイツが、ウクライナ侵攻を受けていかに「歴史的な転換(ツァイトヴェンデ)」を迫られたか。
- 平和主義を掲げていた国が、再び軍備増強へと舵を切る苦悩が描かれています。
- グローバルサウスの台頭と欧米の孤立
欧米が掲げる「正義」が、かつての植民地支配を受けた国々(グローバルサウス)には二重基準(ダブルスタンダード)として映っている現実を指摘します。 - 「法の支配」を叫ぶ欧米に対し、中立を保つ国々が増えていることが、結果として「力の支配」を助長している現状を警告しています。
本書の結論は、「冷戦後の平和な時代は、歴史の例外的な一服に過ぎなかった」という冷徹なものです。かつての19世紀のような、大国が軍事力を背景に国益をぶつけ合う「帝国主義の時代」に世界が回帰していることを認め、その上で日本はどう立ち振る舞うべきかを読者に問いかけています。
日本が直面する「厳しい現実」から目を逸らさず、目先のニュースに惑わされない「世界を視る目」を養うための一冊です。
目次
- プロローグ 「警察官」の退却
- 第1章 覇者の驕り―「無敵」から「Gゼロ」へ
- 第2章 「格差」の超大国―アメリカを蝕む病
- 第3章 リバンチズムー「大ロシア」再興の野望
- 第4章 百年国恥 ー中華民族の偉大な復興
- 第5章 「南」の逆襲ーBRICSの論理と心理
- 第6章 白人の焦燥ー「人種置換」の世界観
- 第7章 SNSと情報工作ー民主主義の新たな脅威
- 第8章 「警察官」の犯罪―時代遅れの戦後秩序
- 第9章 逆流する歴史―よみがえる伝統主義
- エピローグ 「19世紀」へ向かう歴史
