「アメリカ社会の分断は、宗教(特に終末論)を抜きに理解できない」
先日の高城剛さんのメールマガジン(Vol.770, 771)で、米国におけるキリスト教福音派について紹介されていました。米国の政治と宗教について解説されていましたが、より深く知ることができる本がありますのでご紹介します。
書籍『福音派―終末論に引き裂かれるアメリカ社会』は、立教大学教授で宗教学・思想史を専門とする加藤喜之氏が、現代アメリカ政治において無視できない影響力を持つ宗教勢力「福音派」の実態と、彼らの行動原理となっている「終末論」について解説した一冊です。
単なる「狂信的な集団」というステレオタイプを排し、彼らがなぜ政治的に結束し、アメリカ社会を二分するまでになったのかを、その独自の「終末論」を軸に解説しています。
主な内容
- 「終末論」という行動原理(ディスペンセーション主義)
- 福音派の多くが信じる「ディスペンセーション主義(時代区分主義)」という歴史観を詳説しています。
- 世界は終わり(ハルマゲドン)に向かっており、自分たちは神の側の「善」として、世俗化という「悪」と戦っているという認識が、彼らの政治行動の根源にあることを示しています。
- 歴代政権との関わりと変遷
- 1950年代のビリー・グラハムの活躍から、カーター、レーガン、ブッシュ、そしてトランプへと至るまでの歴代大統領と福音派の距離感を描いています。
- かつては「回心(個人の救い)」を優先していた勢力が、いかにして「政治・文化闘争」へと舵を切り、立法や司法(中絶問題など)を塗り替えようとする組織的な政治勢力になったのかを分析しています。
- アメリカ社会の「分極化」とリベラリズムの危機
- 中絶、同性婚、人種、イスラエル支援といった争点が、福音派にとっては単なる政策議論ではなく「霊的な戦い」であるため、妥協や合意を前提とするリベラリズム(対話による解決)が機能しなくなっている現状を指摘しています。
- イスラエル政策の背景
- なぜアメリカがイスラエルをこれほどまでに特別視するのか。それは国益だけでなく、「エルサレムへのユダヤ人帰還と神殿再建がイエスの再臨(終末)の条件である」という彼らの信仰上の要請が深く関わっていることを解き明かしています。
本書は現代アメリカの「分断」の正体を宗教的背景から理解するための決定版として高く評価されています。「トランプ現象」や「アメリカのイスラエル支援」を、表面的なニュースだけでなく、その底流にある「信仰の論理」から深く知りたい方に最適な一冊です。
目次
- 序章 起源としての原理主義
- 第1章 「福音派の年」という転換点 1950年代から70年代
- 第2章 目覚めた人々とレーガンの保守革命 1980年代
- 第3章 キリスト教連合と郊外への影響 1990年代
- 第4章 福音派の指導者としてのブッシュ 2000年代
- 第5章 オバマ・ケアvs.ティーパーティー 2010年代前半
- 第6章 トランプとキリスト教ナショナリズム 2010年代後半~
- 終章 アメリカ社会と福音派のゆくえ
