「イノベーションは全体の繁栄には繋がらず、格差を招く可能性がある」
先日の高城剛さんのメールマガジン(Vol.737)で、「イノベーションでは世界は変わらない」というQ&Aの中で、経済学者のダロン・アセモグル氏が紹介されていました。具体的な本のタイトルの紹介はありませんでしたが、おそらく今回ご紹介する本が該当すると思われますので、ご紹介します。
著者のダロン・アセモグル氏はトルコ生まれでアメリカ国籍を持つ経済学者です。マサチューセッツ工科大学(MIT)で経済学の教授を務めており、2024年にはノーベル経済学賞を受賞しています。
(共著者のサイモン・ジョンソン氏もマサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院の教授で、同じく2024年にノーベル経済学賞を受賞)
本書『技術革新と不平等の1000年史』は、技術革新が必ずしもすべての人の繁栄をもたらすわけではなく、むしろ不平等を拡大させてきたという歴史的な視点を提供しています。およそ1000年にわたる歴史をたどり、中世の農業革命から産業革命、そして現代のAIに至るまで、様々な技術革新がどのように社会に影響を与えてきたかを分析しています。
テクノロジーの進歩は自動的に広範な繁栄につながるわけではなく、利益をより公平に企業と労働者が分かち合うために、「抵抗勢力の存在(市民・労働者)」や「有用な政策(政治)」の重要性を説いています。
この本は単なる歴史の解説にとどまらず、AI技術が急速に進む現状において、技術の方向性をどのようにコントロールし、「万人の繁栄」を実現していくべきかという重要な問いを投げかけています。
イノベーションについて本質的な理解を深めたい方におすすめの本です。
目次
- 上巻
- プロローグ 進歩とは何か
- 第一章 テクノロジーを支配する
- 第二章 運河のビジョン
- 第三章 説得する力
- 第四章 不幸の種を育てる
- 第五章 中流層の革命
- 第六章 進歩の犠牲者
- 下巻
- 第七章 争い多き道
- 第八章 デジタル・ダメージ
- 第九章 人工闘争
- 第一〇章 民主主義の崩壊
- 第一一章 テクノロジーの方向転換
- 解説 稲葉振一郎